株式会社Livune

2026/7/28 コールセンター業務

入電数の計測・分析から削減までの5ステップ|コールセンター実務

入電数の計測・分析から削減までの5ステップ ── 入電計測ガイド

「電話が多い」を減らすには、まず「何の電話が・どれだけ」を数字にすることです。入電計測とは、かかってきた電話を「いつ・何の用件で・どれだけ」の単位で数えることで、専用の計測システムがなくても始められます。入電数の分析から削減までは、記録 → 分類 → 上位特定 → 施策 → 効果測定の 5 ステップで回します。この記事では、計測の単位の決め方から 5 ステップの実務、たまった記録を来月の入電予測に使う方法、計測でつまずきやすいポイントまでを、表計算ソフトだけで今月から始められる粒度で解説します。

この記事の要点
  • 入電計測の単位は「量(件数)・中身(用件)・時間(いつ・どれだけ)」の 3 つ。最初に固定し、途中で変えない
  • 分析の目的は「削減できる用件を特定する」こと ── 全部を細かく分析する必要はない
  • 分類は細かくしすぎない(10 分類以内)。迷ったら「その他」でよい
  • 削減インパクトは件数の多い上位用件に集中している。件数 × 対応時間で並べ替えると、現場の時間を奪っている用件も見える
  • 施策の後に同じ物差しで測り直すところまでが分析。たまった記録は、シフト設計のための入電予測にもそのまま使える
STEP 01
記録を揃える
日時・用件メモを残す
STEP 02
用件で分類
10 分類以内のラベル付け
STEP 03
上位を特定
件数順に並べる
STEP 04
施策を当てる
上位用件×削減手段
STEP 05
効果を測る
同じ物差しで毎月

入電計測とは ── 何を、どの単位で数えるか

入電計測とは、かかってきた電話を数えることですが、ただ合計件数を出すことではありません。「集計」は数えること、「分析」は数えた結果からどの用件を減らせば全体が動くかを見つけることで、多くの現場で止まっているのは集計ではなく分析のほうです。月の合計件数は電話システムの画面を見れば分かるのに、「何の電話が多いのか」を聞かれると答えられない ── この状態を抜けるために、計測の単位を最初に決めます。

計測の軸何を数えるか何に使うか
日別・時間帯別の入電件数、応答できた件数とできなかった件数(放棄呼)全体の規模の把握、削減の効果測定、人員配置
中身用件の分類ごとの件数削減できる用件の特定(この記事の中心)
時間1 件あたりの対応時間、時間帯・曜日の偏り工数への換算、営業時間外の取りこぼしの把握、入電予測

この 3 つのうち、「量」と「時間」は電話システムのログから自動で取れることが多く、「中身」だけは人が足すしかありません。CTI・PBX・クラウド電話であれば着信日時と通話時間は残っていますし、電話機の着信履歴しかない場合でも件数と時刻は拾えます。用件だけはどのシステムも教えてくれないので、対応した人が「用件を 1 行残す」ことが入電計測の要になります。

計測を始める前に、「1 件」の定義を決めておいてください。折り返しの発信を 1 件と数えるか、同じ人からの同じ用件の再入電を別に数えるか、取り次ぎで 2 人が対応した場合はどちらの記録にするか。ここを決めずに始めると、月をまたいだ比較ができなくなり、効果測定(ステップ 5)が成り立ちません。定義は凝らなくてよいので、決めて共有シートの先頭に書いておくことが大切です。

ステップ 1: 入電計測の土台になる記録を揃える

分析の土台は記録です。とはいえ、通話録音や高機能な CTI は必須ではありません。最低限そろえるのは ①受電日時 ②用件の一言メモ ③対応時間の目安 の 3 つ。オペレーターや担当者が対応直後に 1 行残せる仕組み(共有シートで十分)を作ります。入電の計測は、この 3 項目を日次で数えるところから始まります。CTI や PBX に着信ログが残っているなら受電日時と対応時間はそこから取り、用件メモだけを人が足す形にすると負担が軽くなります。

記録の書式は「1 行・30 秒以内」が目安です。たとえば「9/11 10:32 | 住所変更のやり方 | 5 分」のように、日時・用件・所要時間を区切って書くだけで足ります。書き方のルールは 2 つだけにしてください。1 つは用件を顧客の言葉で 1 フレーズ書くこと(「手続き案内」のような社内用語より「解約したい」のほうが、後の分類で迷いません)。もう 1 つは迷ったら空欄で先へ進むこと(空欄は後で分類する人が埋めればよく、その場で止まるほうが記録全体を止めます)。記録に残す項目の設計と書き方は「問い合わせ対応の記録の残し方|分析に使える応対メモの項目設計と書き方」で詳しく解説しています。

日次集計の型も先に決めておきます。共有シートの列は「日付・時間帯(1 時間刻み)・用件メモ・対応時間・分類(ステップ 2 で使う)」の 5 列で十分です。週に 1 回、時間帯別と日別の件数をピボットで数えれば、「量」と「時間」の計測はそれだけで回り始めます。集計を凝った形にするより、毎週同じ表が同じ手順で出てくることのほうが、後の分析にとってはるかに重要です。

ポイントは完璧な記録を目指さないこと。全体のおおまかな傾向がつかめれば分析は始められます。記録の負担が重いと続かないので、始める前に担当者へ「なぜ書くのか(自分たちの電話を減らすため)」を 1 回だけ伝え、最初の 2 週間は記録率(全入電のうち記録が残った割合)だけを見てください。半分に満たなければ、記録の精度を求める前に書式を軽くします。

ステップ 2: 用件で分類する

集まった記録に用件ラベルを付けます。よくある失敗は分類を細かくしすぎることです。30 も 40 も分類があると、付ける側がブレて集計が信用できなくなります。最初は次のような粗い分類で十分です。

分類
手続き変更・解約・再発行の方法を知りたい
使い方操作・仕様が分からない
状況確認注文・申込・対応の進捗を知りたい
料金・契約料金の内訳・請求内容を確認したい
トラブル不具合・エラーが起きた
クレーム・相談不満・個別事情の相談
その他上記に当てはまらないもの

迷った記録は「その他」に入れて先に進みます。「その他」が膨らんできたら、その中身を見て分類を 1 つ足す──この順番なら分類表が現実に合わせて育っていきます。分類表の作り方そのもの ── 定義の書き方・境界例・2 人で試す手順 ── は「コールリーズン分析の分類表の作り方|集計がブレない設計手順」で 1 本の記事として解説しています。

分類のブレを抑える工夫は 2 つあります。1 つは、分類ごとに定義文を 1 行付けること(「手続き = 顧客が自分で手続きを完了させるための方法を聞いている」のように、誰が読んでも同じ判断になる文にします)。もう 1 つは、最初の 1 週間分を 2 人で別々に分類して突き合わせること。判断が割れた記録だけを見て定義文を直せば、以降のブレはかなり減ります。分類はシートのプルダウンにしておくと、表記ゆれ(「手続き」と「手続」が別集計になる等)も防げます。

分類のタイミングは、受電直後に対応した本人が付けるのが最も正確です。それが難しい体制なら週 1 回のまとめ分類でも回りますが、記憶が薄れるぶん「その他」が増えます。その場合は、ステップ 1 の用件メモを「顧客の言葉で書く」ルールを徹底しておくと、後から分類する人が迷いにくくなります。

ステップ 3: 件数順に並べて上位を特定する

件数順に並べた入電の棒グラフで上位の用件が大半を占めているイメージ

分類ができたら、件数の多い順に並べます。多くの現場で、上位のわずかな用件が入電全体の大きな割合を占める偏りが見つかるはずです。この偏りこそが削減のチャンスです。下位の用件をいくら潰しても全体は動きません。見るべきは上位だけです。

件数順に加えて、件数 × 平均対応時間でも並べ替えてみてください。件数は少なくても 1 件に 20 分かかる用件は、件数の多い 3 分の用件より現場の時間を奪っていることがあります。削減の目的が「現場の工数」なら後者の並び、「顧客の手間」なら前者の並びで見ると、施策の優先順位が目的に沿った形になります。

並べ方見えるもの向いている目的
件数順顧客が最もつまずいている用件自己解決導線(FAQ・チャットボット)の優先順位
件数 × 対応時間 順現場の時間を最も奪っている用件工数の改善、応対支援の優先順位
時間帯・曜日別入電が集中する時間帯、営業時間外の取りこぼしシフト設計、時間外対応の要否、入電予測

あわせて「時間帯・曜日の偏り」も見ておきます。営業時間外や休日にかかってきて取れていない電話の割合が大きければ、用件別の削減施策より先に「時間外の受け皿」を作るほうが効くことがあります。人を増やさずに時間外の一次対応を持つ方法は「24時間の問い合わせ対応を人を増やさずに実現する方法」で扱っています。

上位として追いかける用件は3 つまでに絞ってください。5 つも 6 つも同時に追うと、施策も効果測定も散って、どれが効いたのか分からなくなります。3 つの用件の件数が動けば全体が動く ── その状態が、ステップ 4 に進んでよい合図です。

ステップ 4: 上位用件に施策を当てる

上位用件それぞれに「なぜ電話になっているのか」を問い、削減手段を当てます。用件の性質ごとに、効く施策はだいたい決まっています。

上位用件の性質効きやすい施策
手続き・使い方FAQ 整備・サイト導線改善・AI チャットボット
状況確認先回りの通知(完了メール・ステータス公開)
料金・契約料金ページの明確化・請求内容の説明改善
クレーム・相談削減対象外 ── 人の対応時間をここに再配分する

この対応表には理由があります。手続き・使い方の用件は答えが決まっているので、顧客が自分で答えにたどり着ける導線(FAQ・チャットボット)がそのまま効きます。FAQ を作るなら、上位用件から質問を絞る手順を「FAQページの作り方 ── 問い合わせを減らす質問の絞り方・書き方・置き方・更新の回し方」にまとめています。状況確認の用件は、顧客が不安になって電話する前にこちらから知らせることで発生自体を防げます。料金・契約の用件は、電話口の説明を磨くより請求書や料金ページの分かりにくさを直すほうが根本に効きます。そしてクレーム・相談は減らす対象ではありません ── 減らしてよい問い合わせと、そうでない問い合わせの見分け方は「問い合わせ削減はなぜ必要か|戻ってくる時間の試算と減らしてよい問い合わせの見分け方」で整理しています。

施策の詳しい中身は、ピラー記事「コールセンターの問い合わせを削減する方法【完全ガイド】」で 7 つに整理しています。特に電話チャネルに絞った実務の打ち手は「電話問い合わせを減らす方法7選」が今週から着手できる粒度で参考になります。

施策は1 つの用件に 1〜2 個までにしてください。同じ用件に 3 つの施策を同時に打つと、翌月に件数が減っても、どれが効いたのかが分からなくなります。ステップ 5 の効果測定は「何を変えたか」が 1 つに絞れているときに初めて成り立ちます。

ステップ 5: 同じ物差しで入電数を測り直す ── 効果測定

毎月同じ集計で入電数の推移を測り続けるダッシュボードのイメージ

施策を打ったら、ステップ 1〜3 と同じ記録・同じ分類で翌月も集計します。見るのは「対象にした上位用件の件数が減ったか」の 1 点だけで十分です。全体件数だけを見ると、季節要因や新商品の影響に埋もれて施策の効果が判定できません。

比べ方は 3 つ用意しておくと、判断がぶれません。

  • 対象用件の件数(前月比) ── いちばん素直な物差し。ただし月ごとの繁閑に影響を受ける
  • 対象用件が全体に占める割合 ── 全体件数が季節で上下しても、割合なら比べられる。前月比で迷ったときはこちらを見る
  • 施策を打っていない用件の件数 ── 対照として置く。こちらも同じように減っていれば、効いたのは施策ではなく別の要因(繁閑・キャンペーン終了など)の可能性が高い

月次レビューは 30 分で足ります。見るのは「上位 3 用件の件数と割合の推移」「その他に何が入ってきているか」「次に潰す用件はどれか」の 3 点だけ。議事は 1 枚に収め、翌月の担当者が同じ表を同じ手順で出せる状態を保ちます。

この月次サイクルが回り始めると、「次にどの用件を潰すか」が毎月自動的に見えてきます。分析は 1 回のプロジェクトではなく、月次の習慣にする──これが削減を続ける唯一の方法です。

入電予測 ── 計測データを「来月の入電数」に変える

入電計測を数ヶ月続けると、副産物として入電予測ができるようになります。予測の目的は削減そのものではなく、人員配置(シフト)を入電の波に合わせることと、削減施策の効果を「見込み」として織り込むことです。ここから先は特定の製品や手法に依らない、一般的な考え方として読んでください。

最小の予測方法は、表計算ソフトだけで足ります。

  • 土台を作る ── 直近 2〜3 ヶ月分の記録から「曜日 × 時間帯」ごとの平均件数を出す。これが来月の予測の土台になる
  • 要因カレンダーを作る ── 月初・月末、請求書の発送日、キャンペーンや新商品の告知、仕様変更や障害の予定など、入電が動く要因を来月のカレンダーに書き込む
  • 補正する ── 要因のある日は、過去の同じ要因の日の実績を見て、土台の数字を上下に補正する(数式でなく手で直してよい)
  • 実績と突き合わせる ── 翌月、予測と実績の差を用件別に見る。差が大きかった日の要因を要因カレンダーに足していくと、予測は月を追うごとに実態に近づく

入電予測と削減はつながっています。上位用件の削減施策が効き始めたら、その用件の分だけ予測を下げる。逆に予測より実績が多い月は、新しい用件が増えていないかをステップ 2 の分類で確かめる ── 予測は「削減が効いているか」を別の角度から見る物差しにもなります。

AI や専用ツールによる入電予測は、記録が十分にたまってから検討するのが順番です。季節の波を一巡した 1 年分の記録があると、ツールに渡せる材料が揃います。それまでは「曜日 × 時間帯」の平均に要因カレンダーで補正する方法で、シフト設計には十分に使えます。

入電計測でつまずく 4 つのポイント

01
記録が続かない

原因のほとんどは書式の重さです。項目を減らす、電話システムから自動で取れるもの(日時・通話時間)は人に書かせない、最初の 2 週間は記録率だけを見る ── この 3 つで立て直せます。「精度が低い記録」より「続かない記録」のほうが、分析にとってはるかに痛手です。

02
分類がブレて集計が信用できない

分類の数が多すぎるか、定義文が無いかのどちらかです。10 分類以内に戻し、1 行の定義文を付け、最初の 1 週間分を 2 人で突き合わせる(ステップ 2)。「その他」に逃がせる設計にしておくことも、ブレを抑える柵になります。

03
全体件数だけを見て一喜一憂する

月の合計は繁閑・キャンペーン・新商品で動くので、施策の効果はその中に埋もれます。見るのは用件別の件数と割合、対照となる用件との比較(ステップ 5)。全体件数は「規模の把握」に使い、「効いたかどうか」の判定には使いません。

04
分析が 1 回のプロジェクトで終わる

最初の分析で上位用件を潰したあと、記録も集計も止まってしまう例が少なくありません。月次レビュー 30 分を予定に固定し、担当者を決め、同じ表が同じ手順で出る状態を保つ。分析は「やること」ではなく「回るもの」として設計してください。

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よくある質問

CTI やコールセンターシステムがなくても分析できますか?

できます。この記事の 5 ステップは共有の表計算シートを前提に書いています。重要なのはツールではなく「対応直後に 1 行残す」運用が続くことです。件数が多くなり手動記録が追いつかなくなった段階で、記録を自動化するツールを検討すれば十分です。

どのくらいの期間、記録すれば傾向がつかめますか?

まずは 1 ヶ月を目安にしてください。月内の繁閑(月初・月末の偏りなど)を一巡見られるためです。急ぎたい場合は 2 週間でも上位用件の当たりは付きますが、施策の優先順位を確定する前に 1 ヶ月分は確認することをおすすめします。

分類は誰がやるべきですか?

ラベル付けは実際に電話を受けた本人がその場で行うのが最も正確です。後からまとめて分類すると記憶が曖昧になり、精度が落ちます。分類表を 10 個以内に抑えるのは、受電者がその場で迷わず選べるようにするためでもあります。

入電予測には、どのくらいの記録が必要ですか?

「曜日 × 時間帯」の平均を土台にする方法なら、2〜3 ヶ月分の記録から始められます。季節の波(繁忙期・閑散期)まで織り込むには 1 年分が目安です。記録がたまるまでは、要因カレンダー(請求日・キャンペーン・仕様変更など)で手で補正する形が現実的で、AI や専用ツールの予測はその後に検討する順番で十分です。

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