株式会社Livune

2026/8/20 コールセンター業務

問い合わせ削減はなぜ必要か|戻ってくる時間の試算と減らしてよい問い合わせの見分け方

問い合わせ削減はなぜ必要か ── 戻ってくる時間の試算と、減らしてよい問い合わせの見分け方の解説記事アイキャッチ(画像内テキスト: 問い合わせ削減はなぜ必要か / 減らしてよいものを、見分ける)

「FAQ を増やしたのに、入電が減らない」──呼量削減を指示された現場責任者・SV の方から、もっともよく聞く声です。打ち手が間違っていたのでしょうか。多くの場合、原因はもう一段手前にあります。「減らす」が、いつのまにか”全部減らす”の意味で使われているのです。問い合わせには、減らしてよいものと、減らしてはいけないものがあります。この区別を持たないまま FAQ やチャットボットを積み増しても、減らせない問い合わせに向かって打ち手を撃ち続けることになり、件数は動きません。この記事では、そもそも何のために問い合わせを削減するのか(目的)と、どの問い合わせを削減の対象にするのか(対象の見分け方)を整理します。個々の打ち手の詳しい手順は「問い合わせ削減の方法【完全ガイド】」に譲り、本記事はその手前の「狙いを定める」部分を受け持ちます。

この記事の要点
  • 削減の目的は人件費カットではなく、有人が受けるべき問い合わせに時間を戻すこと ── 何に時間を戻すかを先に決める
  • 月 1 万件・3 割減の試算で、年 3,600 時間 = オペレーター約 2.3 人分の時間が戻る(数字はすべて置き数字。自社の実測に読み替える)
  • 打ち手は 4 つあり、効き方がそれぞれ違う ── 特に「チャネルの移動」を「削減」と誤認しない
  • 前線をチャットボットに任せ、判断・感情を含む問い合わせだけを有人へ通す ── bot の役割は回答ではなくトリアージ

なぜ問い合わせを削減するのか ── 見えているコストは一部でしかない

応対人件費の下に待ち行列・二次対応・組織の疲弊などのコストが隠れている構造を示す氷山のイメージ(画像内テキスト: 見えている費用は、氷山の一角)

「呼量を減らせ」という号令は、たいてい人件費の文脈で降りてきます。しかし応対時間 × 人件費という見えやすいコストは、問い合わせが組織に負わせているコストの一部でしかありません。まず全体を層で見ておくと、削減の目的がお金の話だけではないことがはっきりします。

コストの中身
直接費応対時間 × 人件費、席数・回線・システムの費用
待ち行列放棄呼 → 再架電による件数の重複、待ち時間起因のクレーム対応
二次発生エスカレーション対応、SV のモニタリング・フォロー工数
組織応対負荷による疲弊・離職 → 採用と研修のやり直し
機会損失繁忙期に電話がつながらず取りこぼす受注・解約防止の機会

注目したいのは、下の層ほど「件数が多い」こと自体が原因になっている点です。あふれた呼は放棄され、再架電で件数を二重にし、待たされたお客様は不満を抱えた状態で着信します。対応する側は疲弊し、離職が出れば採用と研修が再発生し、残った人の負荷がさらに上がる──件数過多は、それ自体がコストを再生産する構造を持っています。だからこそ、問い合わせ削減は「経費節減の一項目」ではなく、この悪循環を断ち切る打ち手として捉える必要があります。

3 割減ると、どれだけの時間が戻るか

効果を体感できる数字にしておきましょう。ここから先の数字はすべて計算のための置き数字で、業界平均でも当社の実績値でもありません。1 件あたりの平均処理時間(AHT)を 6 分、オペレーター 1 人の月間実処理時間を 128 時間(月 160 時間 × 稼働率 80%)と仮に置きます。このとき、問い合わせが 3 割減ると戻ってくる時間は次のとおりです。

月間入電数削減件数(3割)月あたり年あたり人数換算
3,000 件900 件90 時間1,080 時間約 0.7 人分
5,000 件1,500 件150 時間1,800 時間約 1.2 人分
10,000 件3,000 件300 時間3,600 時間約 2.3 人分
30,000 件9,000 件900 時間10,800 時間約 7.0 人分

月 1 万件のセンターで 3 割減れば、年間 3,600 時間。オペレーター約 2.3 人分の時間が戻り、増員申請を 1 年分先送りできる規模になります。金額に換算したい場合は、自社の 1 コールあたりコスト(応対にかかった総費用 ÷ 件数)を削減件数に掛ければ補助線が引けますが、金額は説明用の補足に留めるのがおすすめです。理由は次の節で述べるとおり、削減の価値は「浮いたお金」より「戻った時間の使い道」で決まるからです。「3 割」も約束ではなく試算の置き数字で、実際の削減余地は問い合わせの中身次第です。AHT・稼働率・削減率の 3 つを自社の数値に差し替えて読んでください。自社の入電がいま何件あり、どの用件で構成されているかを実測する手順は「入電数の計測・分析から削減までの5ステップ」で解説しています。

戻った時間の受け皿を先に決める

ここが本記事でいちばん強調したい点です。削減件数は、そのままでは現金にも余力にもなりません。900 件減っても、戻った 90 時間の使い道が決まっていなければ、その時間は日々の業務に溶けて消えます。だから打ち手を選ぶ前に、戻った時間を何に充てるかを決めておきます。選択肢は大きく 3 つです。

  • 増員の回避 ── 件数増・繁忙期に対して、採用せずに現体制で受け切る。効果がもっとも金額に直結します。
  • 欠員の非補充 ── 退職が出たときに補充せず、自然減で体制を適正化する。誰かを減らすのではなく「補充しない」判断です。
  • 時間の再配分 ── VOC 分析、ナレッジ整備、解約防止のフォローコールなど、これまで「手が回らなかった」価値業務に充てる。

どれが正解ということではありませんが、本記事の背骨は ③ です。問い合わせ削減の目的を「人を減らすこと」に置くと、現場の協力は得られず、削減はやせ我慢の縮小均衡になります。目的は、有人にしかできない問い合わせと業務に、有人の時間を戻すこと──この定義に立つと、「ではどの問い合わせなら機械に任せてよいのか」という次の問いが自然に立ち上がります。それが後半のテーマです。

減らしてよいものと、減らしてはいけないもの

定型の問い合わせは自動化し判断や感情を含む問い合わせは人が受けるという仕分けのイメージ(画像内テキスト: 判断と感情は、人に残す)

「どれを減らすか」を決めるには、まず問い合わせが増える原因を分けて見ます。現場のログを原因でさかのぼると、増加要因はおおむね次の 4 つに収まります。

  • 情報の不足 ── 料金・手続き・期限などの答えが、お客様の見える場所に書かれていない。あるいは書いてあっても社内の言葉で書かれていて伝わらない。
  • 導線の不備 ── 答えは公開されているのに、たどり着けない。検索しても出てこない、階層が深い、スマートフォンで読めない。
  • 不安由来の再問い合わせ ── 「申し込みできているか確認したい」「本当にこれで合っているか」。処理は済んでいるのに、完了が伝わっていないために発生する 2 回目の接触。
  • 業務・製品側の設計 ── 請求書の記載が紛らわしい、手続き画面で迷う、案内文面が誤解を生む。問い合わせは症状で、原因は業務側にある。

この 4 つは、いずれも「お客様は本当は問い合わせたくなかった」問い合わせです。答えがあれば・導線が通っていれば・不安がなければ・設計が良ければ、発生しなかったもの──つまり減らすことがお客様の利益と一致する問い合わせであり、ここが削減の対象です。一方で、判断・交渉・感情を含む問い合わせは、削減の対象から外します。個別の契約条件の相談、支払いが難しいという交渉、強い不満を伴うクレーム、状況の込み入った相談──これらは有人が時間をかけて受けることそのものに価値があり、機械的に減らそうとすると応対品質の低下とクレームの二次発生を招いて、差し引きマイナスになります。「全部減らす」が失敗するのは、この 2 種類を区別せずに同じ打ち手をかぶせるからです。

用件の分類は、感覚ではなく分類表に落としておくと集計がブレません。分類の粒度をどう決め、どう運用するかは「コールリーズン分析の分類表の作り方」で解説しています。

削減の 4 つの打ち手 ── 効き方と限界

チャネルを移す打ち手は件数の総量を減らさないことを移動と削減の対比で示すイメージ(画像内テキスト: 「移動」は「削減」ではない)

対象が定まったら、打ち手を選びます。打ち手は 4 系統あり、効くものと限界がそれぞれ違います。先に一覧で並べます。

打ち手やること効くもの限界
① 発生源を断つ請求書・案内文面・手続き画面の見直し件数そのもの他部署の協力が必要で、時間がかかる
② 自己解決へ流すFAQ・サイト内検索・チャットボット定型の件数元資料の質に依存する
③ チャネルを移す電話 → チャット / フォーム電話の件数総数は減らない = 削減ではなく移動
④ 1 件を軽くする事前入力・ナレッジ・応対履歴の自動化件数ではなく時間件数は減らない

大事なのは限界の列です。① は効き目がもっとも本質的ですが、請求書や手続き画面は他部署の管轄であることが多く、今期の呼量には間に合いません。② は即効性がありますが、FAQ やチャットボットの出来は元資料の質で決まるため、「置けば減る」わけではありません。④ は AHT を縮める打ち手で、件数の議論とは別軸です。そして特に注意したいのが ③ です。電話をチャットやフォームに置き換えると電話の件数は確かに減りますが、問い合わせの総数は 1 件も減っていません。応対チャネルが変わっただけで、対応する工数は残ります。ダッシュボード上は「入電削減」に見えるため、③ を「削減」として報告してしまうと、戻ってくるはずだった時間が戻らないという形で必ず後から辻褄が合わなくなります。移動には移動の価値(同時対応・履歴の残しやすさ)がありますが、「移動」を「削減」と呼ばない──これが打ち手選びで最初に効く規律です。4 つの打ち手それぞれの具体的な進め方は「問い合わせ削減の方法【完全ガイド】」で、どの業務領域から自動化に着手すべきかの全体像は「カスタマーサポートの自動化はどこから始めるか」で、それぞれ詳しく解説しています。

打ち手を選んだあと ── 前線と有人の境目を決める

チャットボットが問い合わせの前線で受けて、定型はその場で解決し判断や感情を含むものは有人へ振り分けるトリアージ構造のイメージ(画像内テキスト: botの仕事は、通すこと)

打ち手 ② を選ぶと、最後にひとつ決めることが残ります。どの質問をチャットボットに受けさせ、どの質問を有人へ通すかです。ここは前半の「減らしてよい / いけない」をそのまま設計に写せばよく、判断軸は 2 つで足ります。

  • 答えが資料で一意に決まるか ── 料金・手続き・営業時間・期限のように、マニュアルや規定を参照すれば答えが 1 つに定まる質問か。定まるなら bot の担当です。
  • 感情・交渉・個別事情を含むか ── 不満の表明、支払い条件の相談、契約内容に踏み込む個別の照会。1 つでも含むなら、bot に答えさせず、有人へまっすぐ通します。

① に該当するものだけが bot の受け持ちで、それ以外は全部、有人へ通す──この設計にすると、チャットボットの役割の定義が変わります。bot の役割は「答えること」ではなく、トリアージ(仕分けて、通すこと)です。定型の問い合わせは前線で受け止めて件数を減らし、判断・感情を含む問い合わせは、待たせず・たらい回しにせず有人に届ける。答えられない質問に無理に答えようとする bot は体験を壊しますが、通すべき質問を見極めて素早く渡す bot は、有人対応の入口として体験をむしろ良くします。削減(定型を減らす)と品質(重要な問い合わせに時間を割く)が、この前線設計で初めて両立します。

本記事は「削減の目的と対象」が主題のため、切り分けはこの 2 軸までにとどめます。切り替えの起点の置き方、渡した先の受け皿、設計を 4 ステップで進める手順まで踏み込んだ実務編は「チャットボットの有人切り替え設計 ── AIと人の切り分け方」を参照してください。

コルットの場合 ── 前線のトリアージを任せる設計

最後に、当社の AI チャットボット「コルット」が、この記事の考え方をどう実装しているかを紹介します。コルットは HP にタグ 1 行で設置できる記述式(自由入力)のチャットボットで、マニュアル・規定・対応ログといった社内資料を知識源にするため、一問一答形式の FAQ を作り込む必要がありません(仕組みの詳細は「FAQチャットボットとは ── 作り込み不要のナレッジ学習型の仕組みと選び方」)。本記事の 2 軸に対応する設計として、答えが資料で決まる質問はその場で回答し、クレームなど感情を含む問い合わせは検知した時点で即時にオペレーターへ切り替えます。またどの問い合わせがコール数を増やしているかを可視化する分析機能を備えており、「減らしてよい問い合わせがどれか」を実データで特定できます。導入は最短 3 日。まずは 2 ヶ月の無料モニターで、自社の問い合わせのうちどれだけが「前線で受け止められる問い合わせ」なのかを、費用をかけずに確かめられます。

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「コルット」はお手元のマニュアルや対応ログをもとに当社がナレッジを整備し、導入後の分析・改善提案まで伴走します。定型の問い合わせが前線でどれだけ止まるかを、実データでご確認ください。

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よくある質問

FAQ を作ったのに問い合わせが減りません。なぜですか?

FAQ が効くのは、増加原因 4 つのうち「情報の不足」だけです。答えにたどり着けない(導線の不備)、完了が伝わらず不安で確認したくなる(不安由来)、業務側の設計に原因がある場合、FAQ を増やしても件数は動きません。まず答えられなかった問い合わせを原因で分類し、どの原因が多いかを確かめてから打ち手を選び直してください。FAQ 自体の質(質問の絞り方・書き方)に原因がある場合もあります。

電話をなくしてしまってもよいのでしょうか?

本記事の立場では、なくすことはおすすめしません。判断・交渉・感情を含む問い合わせは電話で受けることに価値があり、削減の目的はまさに「そうした問い合わせに有人の時間を戻すこと」だからです。電話番号の非掲載などでチャネル自体を閉じると、行き場を失った重要な問い合わせが解約や不満という形で表面化します。減らすのはチャネルではなく、そのチャネルに流れ込んでいる定型の問い合わせです。

削減目標はどう置けばよいですか?

本文の「3 割」は試算用の置き数字で、目標にそのまま使う数字ではありません。おすすめは、直近 1〜3 ヶ月の問い合わせを用件別に分類し、「答えが資料で一意に決まる問い合わせ」の比率を実測して、その一部(たとえば半分)を初年度の目標に置く方法です。実測に基づく目標は現場が納得でき、達成後も「残りはどこか」が見えます。分類と計測の手順は「入電数の計測・分析から削減までの5ステップ」で解説しています。

月数千件の小規模なセンターでも、削減に取り組む意味はありますか?

あります。月 3,000 件で 3 割減なら約 0.7 人分ですが、小規模センターほど SV が応対を兼任しており、この 0.7 人分は「管理・改善・教育がまったくできていない時間」に戻せる 0.7 人分です。また体制が小さいほど、1 人の欠員や繁忙期の波に対する耐性が低いため、定型を前線で受け止めておく価値はむしろ大きくなります。規模が小さいうちに仕組みを作るほうが、移行の負担も軽く済みます。