
「電話の対応に、人と時間を取られすぎている」──電話自動化の検討は、たいていこの実感から始まります。そして多くの場合、最初に思い浮かぶのは「電話に出てくれる AI」です。しかし、いきなりそこを目指すと高い確率でつまずきます。音声での自動応答は、電話自動化のなかでもっとも難しい部分だからです。実は、電話対応という仕事は「電話に出て話すこと」だけでできているわけではありません。かかってくる前の受付・振り分け、会話そのもの、切った後の記録・共有──この 3 つの工程に分解すると、会話の「前」と「後」には、今日からでも自動化できる仕事がたくさん埋まっています。この記事では、電話自動化でできることを工程と手段に分解し、どこから手を付けるべきかの順番、そして「数える → 選ぶ → 段階導入 → 逃げ道」の進め方 4 ステップまで、実務の手順に落とし込みます。
- 電話対応の負荷を下げる打ち手は「入電そのものを減らす」と「かかってきた電話の処理を自動化する」の二系統 ── 本記事は後者。前者は別記事で扱う
- 電話対応は受電前・受電中・受電後の 3 工程でできており、自動化の難易度は工程ごとにまったく違う
- 最難関は「会話そのもの」── 着手は会話の前後(受付・振り分け・記録)から。ここは AI の精度を待たずに始められる
- すべての電話を自動化しようとしない ── 人につながる道を残す設計が、お客様の満足度と自動化の定着の両方を守る
電話自動化とは ── 「入電を減らす」と「かかってきた電話をさばく」の二系統

電話自動化とは、かかってきた電話への対応のうち、人が直接話さなくても品質が保てる部分を仕組みに置き換えることです。ここでまず整理しておきたいのは、電話対応の負荷を下げる打ち手には性質の違う二系統がある、ということです。1 つは入電そのものを減らすこと。FAQ の整備や案内の改善で「そもそも電話をかけなくても解決する」状態を作る打ち手で、詳しくは「電話問い合わせを減らす方法7選 ── 電話数を減らす手順と始め方」で 7 つに整理しています。もう 1 つが本記事のテーマ、かかってきた電話の処理を自動化することです。どれだけ入電を減らしても、電話でなければ解決しない用件、電話を選ぶお客様は必ず残ります。その残った電話を、少ない人手で・待たせず・漏らさずさばくのが電話自動化の役割です。二系統は競合ではなく、両方に手を入れて初めて電話対応の負荷は本格的に下がります。なお、自動化を含めた問い合わせ削減の打ち手の全体像は、ピラー記事「問い合わせ削減の方法【完全ガイド】」からたどれます。
そのうえで、かかってきた電話の処理を分解してみます。1 本の電話への対応は、実際には 3 つの工程でできています。
- ①受電前(電話に出るまで) ── 着信の受付、用件の聞き分け、担当への振り分け、混雑時の待機案内。人が出る前に「誰が・何のために」かけてきたかを整理する工程です。
- ②受電中(会話そのもの) ── 用件を聞き取り、答え、手続きを進める工程。電話対応の中心であり、もっとも人の力が発揮される場所です。
- ③受電後(電話を切った後) ── 応対内容の記録、社内への共有、折り返しの手配、システムへの入力。お客様からは見えませんが、対応時間のかなりの部分を占める工程です。
「電話自動化」という言葉から想像されるのは、ほとんどの場合 ② の自動化──つまり電話に出て会話する AI です。しかし後述するとおり、② は 3 工程のなかで最難関です。一方、① と ③ は会話の精度を必要とせず、間違えてもやり直しがきくため、仕組み化しやすく、効果も確実に出ます。電話自動化の設計とは、この 3 工程のどこを・どの手段で・どの順番で仕組みに移すかを決める作業です。
電話自動化の主な手段 ── 何がどこまでできるか

工程の分解ができたら、次は手段です。電話自動化に使える主な仕組みを、できること・向いている用件・導入の難易度で並べて整理します。
| 手段 | できること | 向いている用件 | 導入の難易度 |
|---|---|---|---|
| 自動音声ガイダンス | 用件別の番号振り分け・営業時間や場所など定型情報の自動案内 | 「◯◯の方は 1 を」で分けられる一次受付 | 低め(電話サービスの設定から始められる) |
| 折り返し受付 | 混雑時に待たせず、折り返し希望を自動で受け付ける | 時間帯によってあふれる着信 | 低め |
| SMS・Web 案内 | ガイダンス中に手続きページや FAQ への案内を携帯電話へ送る | Web で完結できる手続き・よくある質問 | 低め |
| 通話の文字起こし | 音声認識で通話をテキスト化し、応対メモ・共有を軽くする | すべての通話の記録・後処理 | 中(精度の確認と記録の型が要る) |
| AI 音声応対 | 音声で用件を聞き取り、その場で答える・受け付ける | 予約・注文確認など、用件が絞られた定型対応 | 高(聞き取り・言い直し・応答速度の設計が要る) |
| 電話の手前の受け皿 | FAQ・チャットで、電話の前に文字で自己解決してもらう | 答えが決まっている定型の質問全般 | 中(仕組みより導線の設計が鍵) |
表の「難易度」の差を生んでいるのは、電話というチャネルの 3 つの制約です。音声だけで情報が構造化されていない・その場限りで形に残らない・お客様を待たせられない。この制約を正面から受けるのが「会話そのもの」を担う AI 音声応対で、聞き取りの精度、言い直しへの追従、間の取り方まで含めた体験設計が求められます。技術は着実に進んでおり、予約受付のように用件が 1 つに絞られた場面では実用的な選択肢になってきています。ただし、用件を絞るほど成功しやすく、「代表電話にかかってくるあらゆる用件を 1 台で」という形にするほど難しくなる──この性質は押さえておく必要があります。逆に言えば、それ以外の手段(ガイダンス・折り返し受付・文字起こし)は会話の制約を受けない場所で働くため、AI の精度を待たずに導入でき、失敗してもやり直せます。手段選びとは高性能なものを選ぶことではなく、自社の用件と工程に合う難易度のものから積むことです。
どこから自動化するか ── 会話の「前後」から始める

手段が見えたら、着手順です。結論はシンプルで、会話そのものは最後、まず会話の前後から。具体的には次の 3 段階で進めます。
応対メモの型化と通話の文字起こしから始めます。この工程はお客様に一切影響しないため、精度が多少揺れても業務側で直せばよく、3 工程のなかでもっとも安心して試せます。そして効果は記録の手間の削減だけではありません。「どんな用件の電話が・どれだけ・どのくらいの時間かかっているか」が形に残り始めます。この記録こそが、次の段階で「何を自動化するか」を決める材料になります。
自動音声ガイダンスで用件を入口で聞き分け、営業時間などの定型情報はガイダンス内で答え、混雑時は折り返し受付で待ち時間をなくします。人が出る前に用件が仕分けられていれば、つながった後の会話は短く濃くなります。設計の要点は「浅く作る」こと。階層は 1〜2 段まで、選択肢は少なく、そして最後には必ず人につながる番号を残します。ガイダンスが深い迷路になると、お客様の体験はかえって悪化します。
会話そのものの自動化には 2 つの道があります。1 つは、予約受付のように用件を 1 つに絞った AI 音声応対を立てること。もう 1 つは、電話の手前に FAQ・チャットという文字の受け皿を作り、定型の用件をそちらへ移すことです。多くの会社では後者のほうが早く確実です。文字のチャネルは電話の 3 つの制約(音声だけ・その場限り・待たせられない)を受けないため、同じ質問でもはるかに自動化しやすいからです。01・02 で用件の記録が溜まっていれば、どの用件を移すべきかは推測ではなく実測で決められます。
この順番には理由があります。最難関の「会話そのもの」から着手すると、精度への不安が先に立ち、検討が止まりがちです。逆に前後の工程から積めば、失敗の小さい場所で実績と記録が育ち、その記録が会話の自動化(または移設)の設計図になります。なお、電話だけでなくメール・フォーム・チャットも含めたサポート業務全体をどの領域から自動化するかは、「カスタマーサポートの自動化はどこから始めるか ── 4つの領域と進め方」で整理しています。電話はサポート全体の一部でもあるので、あわせて設計すると付け替え(電話は減ったが別の窓口が増えただけ)を防げます。
進め方の 4 ステップ ── 数える・選ぶ・段階導入・逃げ道

着手順の考え方を、冒頭のロードマップに沿って実行手順に落とします。大がかりな設備の入れ替えは要りません。最初のステップは、いまの電話と共有の表計算シートだけで始められます。
ステップ 1: 用件と件数を数える
2〜4 週間、受電のたびに「用件・所要時間・結果(その場で解決したか/折り返したか)」を 1 行記録します。用件の分類は 10 個前後の粗いラベルで十分です。この一枚表ができると、「多い用件」「時間を食っている用件」「答えがいつも同じ用件」が、感覚ではなく数字で見えてきます。電話自動化の失敗の多くは、この工程を飛ばして「たぶん多いはず」の用件に仕組みを当ててしまうことから起きます。逆にここさえ押さえれば、以降のすべての判断に根拠が持てます。
ステップ 2: 「量 × 定型度」で自動化する用件を選ぶ
一枚表ができたら、用件ごとに量と定型度の 2 軸で仕分けます。量が多く定型(営業時間・場所・手続き方法など)──自動化の第一候補です。ガイダンス内の自動案内や手前の受け皿が効きます。量が多いが非定型(相談・交渉・個別事情)──会話は人に残し、代わりに受電前の振り分けと受電後の記録で人の負担を軽くします。量が少なければ、定型なら案内ページへの誘導で十分、非定型なら今は何もしません。ここで大切なのは、人に残す線を先に引くことです。判断が要る相談、強いご不満のお申し出、込み入った事情の確認は、自動化の対象から最初に外します。この線引きが曖昧なまま進めると、「機械では失礼にあたる電話」まで対象に含めた検討になり、精度への不安で計画全体が止まります。
ステップ 3: 段階導入 ── 一度に全部変えない
対象が決まったら導入ですが、電話の入口を一度に作り替えるのは避けます。たとえばガイダンスなら、まず「営業時間の案内+担当への振り分け」の 1 階層だけで開始し、案内の文言もお客様の反応を見ながら直していきます。あわせて、導線の設計を忘れないことです。仕組みを置くだけでは使われません。HP の問い合わせページに電話番号と並べて FAQ・チャットへの入口を置く、ガイダンスで「この手続きは Web で完結します」と案内して SMS でリンクを送る、というように、いまお客様が通っている道の途中に新しい入口を差し込みます。移行直後は新旧の窓口が並走する期間ができますが、導線が正しければ、電話でなくても済む用件から少しずつ移っていきます。
ステップ 4: 人への逃げ道を残し、月次で見直す
どの自動化にも、必ず「人につながる道」を残します。ガイダンスにはオペレーターへの番号を、チャットには有人切り替えを、FAQ には問い合わせ先への導線を。自動で解決できなかった電話は失敗ではなく、設計の一部です。そして運用開始後は月に一度、「自動で完結した件数・途中で人に切り替わった件数・答えられなかった用件」を確認し、ガイダンスの文言・FAQ・振り分けルールを更新します。答えられなかった用件のリストは、そのまま翌月の改善候補です。電話自動化は導入した日に完成するものではなく、この月次の見直しで育っていきます。
コルットの場合 ── 電話の手前に「文字の受け皿」を作る
最後に、本記事の設計と当社の AI チャットボット「コルット」の関係を紹介します。先に正直に書くと、コルットは電話に出る製品ではありません。本記事の整理でいえば、着手順 03 の 2 つ目の道──電話の手前に文字の受け皿を作り、定型の用件を電話の外へ移す役割を担います。HP に専用タグを 1 行貼るだけで設置でき、最短 3 日で本番稼働します。回答はボタン選択式ではなく記述式(自由入力)で、お客様は用件を自分の言葉で書くだけ。知識源はマニュアル・規定・対応ログといった社内資料で、一問一答の FAQ を作り込む必要はありません。24 時間 365 日稼働するため、営業時間外にかかってくるはずだった電話の受け皿にもなります。答えられない相談やクレームはオペレーターへ切り替える設計で、ステップ 4 の「人への逃げ道」を最初から備えています。さらに、どの問い合わせがコール数を増やしているかを可視化・分析する機能があり、ステップ 1 の「数える」を仕組みの側から支えます。まずは 2 ヶ月の無料モニターで、自社の電話のうちどれだけが手前の受け皿で解決するかを、費用をかけずに確かめられます。
「コルット」はお手元のマニュアルや対応ログをもとに当社がナレッジを整備し、電話で寄せられている定型の用件がどこまで文字の受け皿で解決するかを確かめられる AI チャットボットです。どの用件から電話の外へ移すかの整理からご一緒します。
コルットを無料で試してみる →よくある質問
できません ── そして、できない前提で設計するのが正解です。判断や交渉が必要な相談、強いご不満のお申し出、込み入った個別事情の確認は、人が対応すべき電話です。電話自動化の目的は人をゼロにすることではなく、定型の受付・案内・記録を仕組みに任せて、人にしかできない会話へ時間を寄せることにあります。人に残す線を先に引いておくほうが、自動化できる範囲はかえって早く広がります。
用件次第です。予約の受付・注文の確認のように用件が 1 つに絞られた定型対応では、実用的な選択肢になってきています。一方、代表電話のようにあらゆる用件が混ざってかかってくる窓口を 1 台でさばく形は、聞き取りや言い直しへの対応まで含めると難度が高くなります。まずは受電前後(振り分け・記録)の自動化と手前の受け皿づくりで電話の中身を定型用件に絞り込み、そのうえで残った定型対応に音声の自動応対を検討する順番が、失敗の少ない進め方です。
嫌がられるガイダンスには共通点があります。階層が深い・選択肢が多い・最後まで聞いても人につながらない、という「迷路」になっていることです。逆に、階層を 1〜2 段に抑え、選択肢を絞り、人につながる番号を必ず残した浅いガイダンスであれば、用件に合う担当へ最初からつながるぶん、たらい回しが減ってお客様の体験はむしろ良くなります。導入後に「どこで切られているか」を月次で確認し、文言と分岐を直し続けることも大切です。
できます。むしろ少人数の会社ほど、1 本の電話で本来の業務が中断される影響が大きいため、効果を実感しやすい領域です。ただし優先順位が変わります。大がかりな電話設備より、応対メモの型化・携帯への転送ルール・折り返し受付・HP 上の FAQ やチャットといった、小さく始められる打ち手が中心になります。まずはステップ 1 の「用件を数える」を 2 週間だけ回し、いちばん多い定型用件を 1 つ、電話の外へ移すところから始めてみてください。